…そして、頭の中へ訴えかける男性の声が…。
「あー、本日は晴天なり、晴天なり」
啓太くんの頭の中で何処かで聞いた事がある声だなと思いましたが断定は出来ませんでした。
「っ誰なの?」
「その様子だと聞こえているみたいだな」
「え?」
「まぁ、細かい事はいい。お前さん…」
「お前さんじゃないやい、啓太だ!」
「別にいいじゃないか、どうせ顔は見合わせないんだから」
「?」
「ちょっと、啓太ぁ。起きてるのぉ?起きてたら、手伝って欲しいんだけど」
と、その時です。啓太くんのお母さんが帰って来ました。
「まぁ、細かい事は後で話すからな!」
「な!じゃないって」
「ちょっと、なに独り言言ってるのぉ?」
「あ」
さて。忘れていると思いますが、啓太くんの顔は鉄火面のままです。
「水面台に居るのね?」
…っやばい!これ見られたら!…
「ったく、この子ったらいつから色気づいたのかしら…」
お母さんがドアのノブに手をかけようとしたまさにその瞬間!
トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル。
タイミングよく、電話が鳴り響きます。
「あらあら、電話だはぁ」
お母さんは電話機が置いてあるリビングへ急ぎます。
啓太くんはホッと一息しました。
奥の方からお母さんの話し声が聞こえます。
「…、え?あ、七色内科さんですか?今、呼んできますので」
「………え?」
啓太くんは思わず、苦笑いをしました。最早これまでかと思いました。見られたら最期だと。鏡台を見上げると…。
「ちょっとぉ、啓太ぁ。開けるはよぉ。七色さんが…」
「うん、ちょっと待ってて」
なんと、顔は普通になっています。どうやって間に合ったのかなんなのかは解りませんが。
「あ、今変わりました」
「よぉ、お前さんかい?」
何処かで聞いた事がある声は。何処かで聞いた事がある声は…、