あの二人シリーズ
修学旅行は異国へ/はやし まさあき
この号が出るのは年末だが、過度川学園では季節外れの修学旅行があるらしい。いや、あるのだ。現にサブタイトルにそうなっている。しかしまぁ、時期外れな学校だ。今更って言うこともあるが、まぁ、あったのである。
「と、言うわけで我が、光画部はこれを数少ないネタにしなければいけないのだ」
いつものように、三角がそう言った。と、いっても言った相手は、岡部ただ一人であった。
「で、今年は何処へ行くんですか?」
「今年か?今年は、何と大阪らしいぞ」
「大阪って…。普通の高校だったら京都でしょうよ」
「何言ってんのよぉ」
と、会話に紛れ込んできたのは広報部部長であるの君柘であった。
「この小説とこの学校で普通を目指したらいけないのよぉ」
「そうかなぁ」
「ここは、全くの異世界なの。要は魔界が学校に落ちてきたのと一緒よぉ」
「なんか、最後のはどっかで聞いたことあるような」
二人の会話を止めるかのように三角は、
「まぁ、とにかく。今年の修学旅行は大阪行きだ」
「え?大阪行きって言うことは、急行銀河ですか?」
「そんな金、この学校にあると思うか?」
「ないですよね…。まさか、『ムーンライトながら』ですか?」
「いや違う。作者はそこまで甘くない。バスだ」
「…、バスですか…」
岡部が途方に暮れたのも無理はない。
さて。そんなことはお構いなしに時は無情に過ぎ去ってしまった。とうとう、修学旅行へ行く日が来てしまったのであった。
「あ、お早うございます」
「やぁ、お早う」
三角の隣には御自慢の自家用車があった。それを見た岡部は、
「あれ?先生は一緒のバスなんじゃないんですか?」
「私か。私は経費節約のためこれで行くことになった」
「ホントですか?」
「ああ、私が直に縦尾校長に意見を出したんだ」
「…、まさか」
「自分の車を持っている、生徒や教師はそれを足にしたほうがいいんじゃないのかと」
「やっぱり…。あ、僕たちが乗るバスって言うのはまだ来てないんですね」
「いや、来ているよ」
「え?」
「ほら、ウチの学校の前に停まっているバスがあるだろ。ほらあの路線バス、あれだ」
と、三角に聞かれて見てみると、たしかに見たことがある車体が停まっている。しかし、岡部は住んでいる地域が遠すぎるため、実際の会社名を知らないのであった。そこで、君柘に聞いてみると、
「あぁ、あれ?多分、小湊じゃないかしらねぇ」
「いや、違う」
三角が言い返した。
「あれは九十九里鉄道だ」
「何でそっちの方から…、まさか。これで作者は逃げようかと思ってんのかぁ」
思っていたりする。とにかく。一部に不安に思っているかたがいるのだが、ともかく。過度川市を出発したのであった。
そして、アッと言う間に大阪についてしまった。どうせ、途中のことなんて書かなくても気にしないだろうし。
「あれ?何時ついたの?」
岡部が窓の外を見てそう言った。窓の外は、異国であった。同じ本州なのに、異国を感じてしまう、街。そこは大阪。
「何時って、今さっきよぉ」
隣にいる君柘がそう言った。そして、
「で、何処へ行くの?」
「そうだなぁ、って普通は集団行動じゃないの?」
「何か、集団で移動しても個々で散らかしても同じだろうって思ったんじゃないのぉ」
言われてみれば、そうである。しかし、今回の岡部はそうもいかない。
「それじゃぁ、梅雨時の鎌倉じゃないか」
「まぁまぁ、いいじゃないの。なんか、この様子だと河口先生も出てこないようだし」
「あれ、そうだね。今回はどうしたの?」
「三角先生の車に同乗させられたってハナシだよぉ」
「やっぱりな。そういうパターンは踏むんだな」
「で、何処へ行くの?」
「うーん、何処へって…、君の胸の中は?」
「それも良いわね」
と、二人は府内観光へ急ぐ同級生を後目に、意気揚々と旅館へ急ぐのであった。
指定された部屋にはいると、岡部はバタンと強くは閉めなく、静かにゆっくりと、まるでその時間を楽しむかのように、襖を閉めた。
部屋の中には既に、君柘がいる。窓を背にして逆光になっている。岡部はそれが眩しくて、思わずカーテンを引いた。すると、君柘はそれを拒否するかのように岡部の手を握った。岡部はその手を離す代わりに、肩越しにボタンをときはじめる。君柘は、それを拒否するのではなく、まっていたかのようである。
岡部は既にズボンを脱いでおり、優しく重なり合う。岡部が振動を与える度に、君柘の息が上がってくる。岡部は更に、その振動を激しくする。そして、岡部の体内から君柘の体内へ何かが入り込んでくるのが君柘は解った。岡部は何かが出たことを感じとって、なにかしらの開放感を得たのであった。
ことを済ますと、岡部は、
「ねぇ、ここのお風呂混浴なんだって」
「へぇ、まさか岡部クン。それを狙ってぇ…」
「いや、そうじゃないけれども、ほら…。身体がほたっている間はいいけれども、じきに寒くなるだろ?」
「うん、入りにいこうかぁ」
そして、二人が仲良く大浴場へ行くと、既に人影があった。
「あれぇ、既に先客がいるかぁ。まぁ、決まっているし。あ…」
その人影は何処かで見たことがある顔であった。しかも、二人連れ。岡部に悪寒が走った。そう、その二人連れというのは……、
「あ、河口先生じゃないですかぁ。どうしたんですかぁ」
「どうしたんですかって。今大阪に着いたんだよ」
「あれ?ウチの顧問は」
「あー、彼奴か。彼奴はそこで伸びとるぞ」
と、言うと、岡部の隣にいる君柘を見て、
「まさか、おまえ。風呂でやろうかと思っていないだろうな」
「なんで、風呂でやんなきゃいけないんですか!まぁ、作者なら考えそうなことだけども…」
「じゃぁ、考えそうなら、君柘。どうだ?」
「えぇ、こんなところでやんのぉ。ここでやったらのぼせちゃうと思うけどなぁ」
と、一言で、返されたそうな。まぁ、とにかく。何時もどおりというか、パターンどおりに、ハナシは終わるのであった。あーあ。何処か行きたい。仕事じゃない、取材でもない。私情で。
(掲載:洗脳R第21号/H.9.12.29発行)
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