ぼくが漫画について語ったら洗脳R第9号掲載分
さて。先日、懐かしい本を見つけた。『どろろ草紙縁起絵巻』(武村和子著/フィルムアート社刊)である。
タイトルにある『どろろ』(サンデーコミックス/秋田書店刊。つい最近“秋田文庫”に入りましたね)は手塚先
生の恐怖三部作の一つで、はじめは少年サンデーにて連載されて、その続きを冒険王に引き継がれた作
品である。この作品の特徴は、何と言っても“奇形児”でしょう。主人公の百鬼丸が生まれて、捨てられる所
から物語は始まります。で。この本は、その『どろろ』について語られた本でして、読むのが難しい本です。
いや、ホントに。でも、それをどうにか克服すると、『どろろ』と言う作品をまた別の見方が出来ると思います。
ちなみに、この本の著者である武村さんは、漫画関係の方ではなく、翻訳家。しかも、プロフィールによると
オペラの台本も手がけているそうな。うーん。漫画以外の方がこんな本を出すとは…。
著者の年齢(昭和38年生まれ。本書の中心となっているアニメ版『どろろ』は昭和44年)からいくと、朧気
に覚えていると思えます。ところが!このアニメ版『どろろ』(途中で『どろろと百鬼丸』にタイトル変更)は、放
送されたのは一回だけ。先に書いたとおり、“奇形児”が主人公のハナシになっているので、それで再放送
をされていない(身体障害者の問題で出来ないそうだ。そういえば、手塚先生の作品で黒人問題でひっかっ
かた事がありましたね。ちなみに、そう言ったことで問題視され始めたのはちょうどその頃だったそうな。そ
の問題で放送を打ち切った番組もあったそうで。興味がある方はその種の本が岩波ブックレットで出てま
す)。そう、幻の作品なんです。と言うことは、本書を書くことになって初めて見たと思われます。 そんな著
者が語る『どどろ』の世界というのは、漫画ファンや一応この作品の存在を知っている方(私がバイトで通っ
ている某H大のパートの方は、アニメ版を見たことがあるという!!)と見方が違うのです。著者は“演劇”と
たとえている。うーん。やはり違う。住んでいる世界が違うせいか?でもね。この本を読んで私は思ったんだ
が、一つの作品でも色々な見方があるんだなぁと思った。本書では『どどろ』終了後の百鬼丸(ブラック
ジャックに出てくる百鬼博士など)を追っている。ーん。それって、手塚先生のスターキャラ制度に目をついた
んですな。でも、本書は、読んでいると別の世界から見る漫画というのはなんぞや…と言うのが良く見えて
きます。ちなみに、本書の後半になって来ると、百鬼丸とどろろの会話(最後はあのブラックジャックと百鬼
博士)がよく、出てくる。やはり、“演劇”なんだろうなぁ。おハナシにすぎないんだろうなぁ。会話というのは
その裏側なんだろなぁ。まぁ、本誌を読んで興味を持った方は是非、読んで下さいな。滅多に見れないアニ
メ版『どろろ』が見れます。
(初出:洗脳されるぞっ!!R第9号;平成9年3月3日発行)
後日談:知っている方は知っていると思いますが、去年あたりになんと!DVDBOXが発売。ーん、凄い時
代になったものである。ちなみに、このコーナーのタイトルは秋元康氏の某書をもじったもの。たしか、ワニ文
庫か何処かだと思いました。そう言えば、一時期雑学モノの文庫が流行っていて、今は亡き大陸書房も出
してましたね。余談になりますが、同じバイト先で大陸書房に勤めていた方がいて、潰れた後…来たそうで
す。よく、裏話を聞いたものです。
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